森井聖大ファンクラブ通信

    マイペース・マイワールド

    大腿骨頚部内側骨折2ー歩けないー

    比較的若い男性医師は、PCモニターの前に僕を座らせ、慣れた手つきでマウスをクリックして、母のレントゲン写真や、この病気に対する病院の対応を説明する。
    無精ひげが伸びているのは、外科医らしく、ほとんど眠る暇なく手術を連続してやっていると想像できる。
    「実は、お母様の手術と同じ手術は毎日のようにやっています。その他、同じ病気で症状の軽いものまで含めると一日5件やっていまして、今日も休むまもなく5件連続です。お待たせしてすみません」
    この大腿骨頚部骨折について、丁寧にまとめられたレポートを渡される。

    【概念】
    大腿骨頚部内側骨折とは脚の付け根の部分の骨折です。大部分は高齢者に転倒などの軽微な外力によって発生します。骨密度は低値であり、骨粗しょう症とより密接に関係していると考えられています。
    【頻度】
    大腿骨頚部骨折の年間発生数は全国調査によると、1987年は53000人、1992年は77000人、1997年には92400人と増加傾向にあります。
    (データが10年以上前のものというレポートだが、現在2011年は更に増えていることは想像できる。)

    分類は、Ⅰ型~Ⅳ型まであって、母の場合は重度のⅣ型だった。

    軽度の状態では、ボルトで骨を接合するが、重度になると、骨を接合しても骨がもろいためつきにくく、ついたところで骨粗しょう症により骨がなくなりすぐに外れるから、Ⅲ型とⅣ型という重度の症状には、人口骨頭挿入術という手術を行い、人口の骨(ステンレス合金)で脚と骨盤をつなげる。

    そういう説明の後、手術の同意書と輸血同意書に記入を求められる。
    母の場合は軽微な認知症があるので、歩けなくなることで進展することを避けるのと、歩けなくなることで一人暮らしが難しくなるから、リスクを承知の上で同意する。
    「30分くらいの簡単な手術ですが、私なんかも慣れていますが、100%ではありません。この世に100%なんてないですから。個体差もあります。全身麻酔による死亡の危険性は0ではないです。1万人~2万人に1人は毎年亡くなるのです。感染症もありますし、血栓症もあります。また出血が止まらなくなり、この手術では輸血はまずないですが患者さんによってはありえます、その時に輸血による感染症や合併症も起こり得ることは頭に入れておいてください」

    頷くしかない。

    そうして2月17日、入院2日後に無事手術を終えた。

    「あとはリハビリで歩けるようになることですが、これもまた個人差があります。一ヶ月が目処です」

    そういうことで、昨日手術から1週間たって少しは歩いているかとお見舞いに行ったが、母は熱をだして点滴を受けていた。
    二日間食事をしていないらしく、リハビリも全くやっていない。
    「熱がさがったらリハビリして、とりあえず歩けるようにしないと」
    「そうなんだけど、体がきつくて難しい。痛くて。起き上がることもできないし。このまま歩けないかもしれない」
    相当に弱っている。
    「わたしのあとから手術をした人はもう歩いているから悔しいけど。とにかく痛いし。昔から運動音痴なのよ」
    力なく笑う。
    寝たきりが長引けば、脚も細くなるし、床ずれもあるし、認知症の恐れも増加する。
    「わかるけど、2ヶ月は痛みがとれないらしいし、この先も多少鈍い痛みはあるらしいから、痛いからって歩かないと言ってたらずっと歩けなくなる。歩かないと帰れない。来週来た時は、せめて立ち上がることくらいできるようになっていてよ」
    母はしばらく黙り、ぽつっと言う。
    「髪の毛、もう生えたの?」
    目が見えていないので帽子をかぶっていることはわからないはずだから、覚えていたのかと少し僕は驚いた。
    「いや、まだ。半年から1年くらい。もしかしたら何年も生えてこないかもしれない」
    「薬を塗らないと」
    よくわからないまま、逆にどうでもいい脱毛症のことを心配され、熱があることだし、これ以上何か言っても悪いから、病院をあとにする。
    寝たきりになると、一人暮らしは難しい。
    施設などを探さないといけなくなる。
    髪の毛どころの話じゃない。

    とりあえず来週、また見舞いに行く。

    Posted by 椰子金次郎 on  | 0 comments  0 trackback
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