森井聖大ファンクラブ通信

    マイペース・マイワールド

    文学フリマ外伝ー新宿・模索舎の偏屈で風変わりな愛すべき店長の話ー

    第十五回文学クリスマスを無事に終え、歌舞伎町で打ち上げを終え、朝方からネカフェ〈マンボー〉で仮眠をとった俺は、昼頃起きて、そのまま新宿の風変わりな本屋・『模索舎』に向かった。
    毎回、文学フリマ後に納本して委託販売をお願いしているからだ。
    しかし、この本屋に行くのには、なかなか心構えがいる。
    知っている人は、これだけで、「ああ、そうだよね」と納得することだろう。
    もう3度目だが、それでも何も考えずに入れるような店ではないのだ。
    今日の店長の機嫌はどうなのかを想像しながら、全く無言の仏頂面と向き合うか、さもなければ何か小言というか愚痴を聞かされる覚悟をもって、行かなければならない。
    そんなこともあり、一旦途中のドトールで気持ちを整えるべく、珈琲と煙草で精神統一してから、『模索舎』に入った。
    ちょうど、若く聡明そうな女性が店長と話をしていた。
    若い女性と話をしているところを邪魔すれば、店長の機嫌を損ね、きっとその後しっぺ返しで色々言われるだろうから、俺は2人の会話が終わるのを入口付近でじっと待っていた。
    2、3分くらいか、「それでは」とその女性が店長に言う。
    帰り際、すれ違うときに俺にも会釈をした。
    ただのマナーかもしれないが、どこかで見た記憶があるようなないような、よくわからない。
    と思いつつ、レジ前に歩み寄り、
    「ご無沙汰してます。何故?の森井です」
    と店長に挨拶をした。
    眼鏡の奥の眼光が今日は優しい気がした。
    多分、若い女性と話した後だったからだろう。
    「あー、『何故?』さんね、よしよし」
    店長は大きなバインダーを取り出しページをめくる。
    俺は、しかし、この後の変化を恐れながら、店長の仕事を邪魔しないように、無言でレジの前に立っている。
    「今日は本持ってきたの?」
    俺は頷きバッグから『何故?十号』を取り出し、レジのカウンターに置く。
    「昨日は文学フリマだったから、今日は納本ばっかだよ。どうせ文学フリマの余り物だろ。余ったやつは模索舎に置いておけばいいやって感じなんだろ」
    さあ、いつもの愚痴がきた。
    「いえ、もとから模索舎さん用に取っているんで。文学フリマなんかより、僕は模索舎で売れた方が嬉しいですから」
    そのことに関しては、正直に、うろたえることなく言った。
    店長は無論疑いの眼差しを俺に向ける。
    「どうせ、このあとタコシェにも行くんだろ」
    「いえ、僕は模索舎だけですよ。『何故?』は模索舎があうと思って置いてもらってますから。どこでもいいわけじゃないんですよ」
    「どうせタコシェには相手にされなかったんだろ」
    「はじめから行ってもいません」
    こんなやりとりが何度か続いて、その後、昨今のコンビニ事情について話をはじめた。
    俺は深く頷きながら聞いていた。
    「本当におれなんかも本屋なんてやってるけど、何が「ありがとうございました」だって思う時があるよ。なんでおれが「ありがとうございました」なんて言わなきゃいけないんだろうね」
    「ええ、本当にありがとうございます」
    ともかくこれ以上機嫌を損ねるわけにはいかない。
    もう若い女性からバトンタッチしたあとのご機嫌な様子は微塵もない。
    「本を売らない本屋なんて面白くないか?もう売るのやめようかな」
    「面白いと思います。本屋なのに本を売らない、その潔癖さ、僕は好きです」
    「そうだろ。ただそれじゃ生活できない」
    「はい、難しいところですよね」
    こんな会話の折に、どうせ模索舎なんてとアンタも思ってるんだろ、みたいなことを言われる。
    それでも10分くらいしかいなかったかもしれない。
    「愛しています。よろしくお願いします」
    と言って、俺は店を出ようとした。
    すると、後ろから、店長の舌打ちが聞こえた。
    「チッ、何が愛しています、だよ。何が『何故?』だよ」
    と、ぶつぶつ言っていた。
    また戻ってちゃんと言おうかと思ったが、そのままドアを開けて、外に出た。
    俺としては、九号の『冬子は、森へ』の中に『模索舎』をだすほど『模索舎』が好きなことを言おうかどうか迷いつつ、何だかそれはごますりみたいに思えて言うのをやめた。
    何かの拍子にふと読んだ時に、「あいつの言っていた模索舎愛は本当だったんだ」と思ってくれたらいい、と思った。

    ということで、『何故?』8号.9号.10号は、新宿の愛すべき、本屋の中の本屋、『模索舎』でのみ販売しています。
    よろしければ、どうぞ、風変わりな店長を見るついでにでも、『何故?』を買いに行ってみてください。
    模索舎地図

    また遠方の方で新宿まで行けない方は、模索舎で通販もやっていますので、ぜひご利用ください。
    模索舎通販

    Posted by 椰子金次郎 on  | 0 comments  0 trackback
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