鯨子物語2

    家に帰ると人の気配があった。
    「誰?」
    「わたしよ」
    黒縁メガネにつぶらな瞳、鯨と瓜二つだ。
    違いがあるとすれば肩まで伸びる長い髪くらいだ。
    メガネの中のつぶらな瞳に溢れんばかりの涙をためている。
    「父を助けてください」
    あまりにも切実な声音に胸が締めつけられる。
    「私にはどうすることもできない」
    数分たっても、じっと立ったまま動かない。
    「もう帰りなさい」
    私がそう言うと、しゃくりあげるように泣き出した。
    どうしていいかわからなくなり、煙草に火をつけた。
    「すべて終わったことなんだ」
    「何にも終わってません。十数年後、わたし、文芸部をやめたし、文フリにも行けなかった……」
    ますますどうしていいかわからなくなりウイスキーをグラスに注ぎ飲み干した。
    「わかったよ」
    本当は他の人たちと同じように自分の為だけに小説を書いていたかった。
    だがこれも運命なのだろう。
    「ありがとう、おじさん」
    「いいんだ。私に良いアイデアがある」



    つづく。
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