ひとりツーリング死闘篇

    朝、バイクを取りにいった。
    予想していた通り、しばらく倉庫で眠っていたこともあり、そのままではエンジンもかからなかった。
    持参した新しいバッテリに交換し、タイヤの空気を入れ、公道を走れる状態にするまで2時間ほどかかった。
    昼過ぎ、ようやくバイクに跨った。
    15年ぶりくらいだから、これまた予想していたものの、はじめはクラッチとアクセルのタイミングがあわず、走るのもやっとの状態だった。
    こんなことで山道ばかりの長旅を帰れるか不安になった。
    だが、1時間ばかり乗っていると、体が眠っていた記憶を呼びさましたようだ。
    イージーライダーよろしく颯爽と風をきって走った。
    しかし、問題はそれからだった。
    前の持ち主が一人乗り用の自転車のサドルのようなシングルシートに改造しているものだから尻がはみだし尾てい骨が痛くなってきた。
    ドラッグスター250シングルシート
    そうかと思えば、突如、左の太ももが痙攣しはじめ、その直後、左手の指までもつってしまった。
    諸行無常とはこのことだ。
    生き地獄のような、いきなりの断末魔に襲われたのだった。
    バイクは左手でクラッチを切り、左足でギアチェンジする。
    普段使っていない筋肉を使ったことで、体が悲鳴をあげたようだ。
    全身が痛い。
    喜びも束の間、突如、辛く苦しい、いつもの人生になった。
    風というのはこんなにも厳しい敵のような存在なのか。
    このまま地獄に向かって走っていく感覚だ。
    死を想起し、限界を感じた為、山道にバイクを止め、しばし休んだ。
    わかばを2本吸って、缶珈琲を1本飲んだ。
    何とか指も動き、太ももの痙攣もおさまった。
    よし、いざ、出発!
    しかし、30分も経たない内に、またしても、今度は右の太ももまで痙攣し、全身がツッたのだった。
    それからは、この繰り返しだった。
    そのたびに、道の駅や路肩で休み、体力が回復したら、すぐ走りだし、また全身が悲鳴をあげたら、休憩。
    とにかく日が暮れる前に帰りたい。
    その一心だった。
    だが、結局、7時間もかかってしまい、家に着く前に日が暮れた。
    疲れきった肉体で、暗い部屋に電気を灯し、TVをつけると、オリンピック放送をしていた。
    すぐにテレビを消し、風呂に入って、全身をもみほぐした。
    明後日あたり、オリンポスの果実たち以上の筋肉痛に襲われることだろう。


    阿蘇外輪山にてドラッグスター250
    阿蘇外輪山にて
    阿蘇にて休憩の際。








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