マイペース・マイワールド

    心持ち喧嘩せず

    賢者の嘘

    噓をついた時の居心地の悪さに身悶えする夜があるだろう。
    噓をついた自分の未熟さに恥じ入り穴があったら入りたくなる日があるだろう。
    特に自分を大きく見せる為についた噓ほど醜いものはなく、次の日、情けなくなり、死にたくなるだろう。
    だが、良いのだ。
    噓は人間を成長させるのだ。
    その自己嫌悪こそが我が身を見つめることになるのだ。
    気にせずに、どんどん、噓をついて良い。
    そして、絶望的にまで、恥じ入れば良い。
    かくいう私も昨日噓をついた。
    職場の飲み会で、とある30代前半の青年が羨望の眼差しで語りかけてきたのだ。
    「僕も椰子金さんみたいに自由に生きたいんです。どうしたらいいですか」
    どうやら青年は私を筋金入りの無頼派だと思い込んでいるらしい。
    私は勘弁して欲しいなと思いながらも仕方なく青年のイメージにあわせそれっぽいことを助言した。
    「人生は一度だからな。誰の思惑にも振り回されず、なるべく自由に生きた方がいいよ。そうだな。若いのだから色々なところに旅をするのがいいな。例えば世界一周とかね」
    すると、青年は、目を輝かせながら、こう聞いてきた。
    「世界一周したんですか」
    私は、ここで、一瞬迷った。
    いや行っていないけどね、となると助言の辻褄があわなくなるだろう。
    そのような、一瞬の判断から、こう言ってのけた。
    「ああ、もちろん。船でな」
    そうして、私は、前回取り寄せたピースボートの資料を思い出しながら、船内の様子や、世界の人々との触れ合いなど、持ち前のリアリティ溢れる想像力でもって話して聞かせたのだった。
    「やっぱそうでしたか。世界一周とかしてそうだもんな。すごいなあ」
    青年は終始感嘆しながら私の噓に聞き入っていた。
    まだ酒を飲んでいたから良かった。
    だが、家に帰り、酔いがさめると、途端に恥ずかしくなった。
    実際のところ、世界一周など行った事ないのだ。
    海外は韓国にしか行った事が無いのだ。
    さらに国内においても、東京より上には行った事が無いのだ。
    死にたくなった。
    明日から私は職場で世界一周した男として有名になるだろう。
    だが、一日たって、真実に気づいた。
    もっと言うと、これは事実ではないが真実なのだ、と気づいた。
    相対性理論にあるとおり時間軸は一方向ではない。
    私の思うがままに変幻自在なのである。
    過去には行った事が無くとも未来には行くかもしれないのだ。
    そうすると、いつか、この噓も本当になる時がくる。
    いつか、私は、世界一周に行くだろう。
    行きたいと思っているのだから、いつか行くだろう。
    それだけの事なのだった。



    Posted by 森井聖大 on  | 0 comments  0 trackback

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