マイペース・マイワールド

    心持ち喧嘩せず

    きみが見たじゃないか

    太陽が照りつける真夏の昼。

    誰も通らない路地のわきに小さな花壇があった。

    私が、その花壇を見つけたのは、つい昨日、学校の帰り道、いつもは通らないその路地に、ふと踏み込んだ時だった。

    うちに帰り母に聞くと、母は何食わぬ顔で、こう言った。

    「ああ、あれは、どっかの得体の知れない老人がやっているのよ。もうわたしが子どもの時から、ずっとああして、花壇の手入れしているのよ。自分の家でもない誰も通らない路地の細道なのに。変わりモノよ」

    「ふーん、この町に、そんな変な人がいたんだね」

    何十年も、来る日も来る日も手入れし、綺麗な花を咲かせているらしい。

    何だか気になり、今日も路地に入ったら、ちょうどその老人がいた。

    曲がり角に隠れて、しばらく老人を見ていたら、腰を曲げ、土をいじり、花に水をやり、満足そうに空を見上げ、背伸びした。

    私は、好奇心を抑えきれず、老人の側に近づいた。

    「お花、綺麗だね。でも、誰も通らない路地だから、何だか意味ない気がするよ」

    私は、少しどきどきしながら、昨日からの想いをぶつけてみた。

    すると、老人は、私を見て、こう言った。

    「きみが見たじゃないか」


    Category : 創作メモ
    Posted by 森井聖大 on  | 0 comments  0 trackback

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