森井聖大ファンクラブ通信

    マイペース・マイワールド

    文学フリマ外伝ー過越祭を行う宗教団体青年との会話ー

    射精を終えピンサロから出てJR蒲田駅西口に着くと、幾多の宗教団体が布教活動に専念していた。
    見覚えのなる冊子をもったエホバものみの塔などもいる。
    足早に通り過ぎようとしたところ、2人の若い男が、俺に近寄ってきた。
    「少しだけコレを見てください」
    そうしてipadを見せる。
    言葉のアクセントから韓国人のようだ。
    そこには飢饉や災害などの映像が流れている。
    「だから、何だ?その情報は知っている」
    俺はipadを持つ韓国人青年にそう言った。
    韓国人青年はまだ日本語がカタコトのようで「情報?」と言って、隣の日本人青年に聞く。
    韓国人青年の通訳のような役割で同じように若い日本の青年が横に立っている。
    なるほどと頷き、韓国人青年は、用意しておいた言葉を思い出しながら言う。
    「世界には色々な悲惨な出来事があるんです、その映像です」
    「それは知っている。だから、なんだ?きみらの主張を言え」
    韓国人青年は再び「主張って?」と隣の日本人青年に聞いた。
    「おい、布教に来たのなら、まず言葉をきちんと覚えろよ。話にならないじゃないか。韓国の人みたいだけど、統一教会か?」
    俺がそう言うと、韓国人青年は苦笑する。
    「いえ、文鮮明ではありません。わたしたちは過越祭を行っている団体でして、世界150カ国に教会があります」
    「日本にもあるの?」
    「はい、あります」
    「現在、過越祭を行っている団体はわたしたちだけです」
    「それが、災害や飢饉や、世界の不幸と関係あるって主張なのか?」
    「はい、わたしたちの主張というのではなく、聖書では過越祭を行わないと災いがおこると言っています。神様の主張です」
    韓国人青年は覚えたての〈主張〉という日本語を気持ち良さそうに口に出し満足そうに微笑する。
    「ふーん」
    「教会に来ませんか?」
    「きみらの団体名はなに?」
    普通ここでその名前を〈何々です〉と言うものだと思ったが、2人の青年は言わない。
    そうしてずっと黙って聞いていた日本人青年が横から割って入った。
    「何故、名前を聞くんですか?どうしてですか?」
    「普通名前くらい言うだろ。まあ、調べたいからだよ」
    「過越祭に来ないなら教えられません」
    どうやら何故か俺を警戒している風だ。
    「行くか行かないかは後からの話だと思うよ。何かパンフレットのようなものはないのか。貰って帰る」
    「ありますけど、何に使うんですか?」
    「まあ、分析する」
    すると韓国人青年が再び「分析って?」と日本人青年に聞く。
    日本人青年が答えると、韓国人青年は「ああ」と頷く。
    2人の青年はもう言葉を失っている。
    「今まで、統一教会も、エホバの証人も、俺が資料をくれって言ったら、原理教典とかエホバ訳の新約聖書とかくれたぞ。俺は自分なりに聖書も読んでいるし、それがどうなって、こういう色々な宗教がでてきているのか、自分なりに考えてたいだけだよ。あくまで個人的に。その相違点を分析するだけだよ」
    「・・・・・・大事な資料なので、興味がない人にはあげられません」
    「興味は誰よりもあるよ」
    「・・・・・・」
    「大体、何千年繰り返しているんだ?聖書の解釈でキリスト教でありながらバラバラの主張をして。まずはじめにそういう自分らのキリスト教内を統一することが先なんじゃないのか。それが不幸の原点だと気づかないか?」
    「・・・・・・」
    「もういい。あとから自分で調べるよ。本当に現実から乖離せず救われたいなら、宗教より文学だ。もともと聖書は物語で構成は芥川の藪の中と同じだ。色々な視点で同じ事象を物語り、真実などないということを、つまりはどれを信じ何を信じるかにすぎないと語っている文学作品だ。メタファーとしての神だ。その聖書の愛読者をキリスト教徒と呼び、解釈の違いを宗派と呼ぶ、それだけだろ。俺も、きみらのように、街角にたって、文学の素晴らしさを布教するとしたら、どう思う?俺が俺の作品の素晴らしさを駅前に行く人々に声をかけ、ある一文を抜き出し、読んで聞かせ、どうか『何故?』に入りませんか?というんだ。それを、きみらはどう思う?」
    「・・・・・・」
    無言になったから、「がんばって」と声をかけ、彼らと別れた。

    あとから調べたら、神様の教会世界福音宣教協会という団体の青年だった。
    青年2人は悪い人間ではなさそうだった。
    まあ、そうだと思うなら、宗教を頑張ればいい。
    そういう人生もあるだろう。

    俺も、文学を、頑張る。

    Posted by 椰子金次郎 on  | 0 comments  1 trackback

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