マイペース・マイワールド

    東南から来たはずだが、いつからか日本人。

    小柳日向との会合 その4 -映画館の中の映画館、福岡中洲『大洋映画劇場』到着ー

    博多駅から徒歩で中洲まで向う。
    そんなに距離があるわけではないが、普段ほとんど歩いていないせいと煙草の影響か、10分後くらいにはもう心臓がばくばくしてきた。
    「まだ?」
    「博多座の近くです」
    博多座は福岡ポエイチで利用した地下鉄・中洲川端駅の目の前だ。
    一人ならば確実に地下鉄で行っていただろう…。
    例えると、徒歩で、赤坂から六本木まで行くのとほぼ同じ距離と時間だ。
    前を見ると小柳日向はコートのポケットに両手を入れて、まるで歩くためだけに作られた機械人形のように一定の歩幅とスピードですたすた歩いていく。
    「歩くの好きなの?」
    「好きです。いつも歩いてます」
    見かけによらず健脚だった。
    信号が赤の時は停止ボタンを押したかのようにピタッと止まる。
    全く息も乱さず、歩くことに、一寸の狂いもなかった。
    少々遅れ気味のおれは後方からその歩きっぷりを眺めながら、普段歩いていることがよくわかる小柳日向の完成された歩きっぷりに感嘆していた。
    ふと小柳日向が後ろを振り返って言う。
    「足取りが重いですね。普段歩かないんですか?」
    「ほとんど車だな。田舎だから」
    「歩いた方がいいですよ」
    そう言って、また前を向き、すたすた歩いていく。
    しばらくして、
    「あった!ここです!大洋映画劇場!
    前方から小柳日向が叫ぶ。
    完全に周回遅れ気味のおれは最後の力を振り絞って早歩きでその場所まで行く。
    「ここか。ほんとだ。見た目でいい映画館ってわかるね」
    「何の映画観ます?」
    「いま何の映画やってんだろう」
    「わたしも全く知りません。でも映画って本当はこんな感じじゃないですか。ただの暇つぶしでのんびりと観るもんじゃないですか」
    「そうだな。何の予備知識もなく、適当に選んで、何気なく観るのが自然だよな」
    ひとまず映画館前で上映中の映画ポスターを眺めて決めることにした。
    「東京家族は?」
    おれが言うと、
    「どういう映画ですか?」
    と小柳日向が言う。
    「適当に目に入ったから。でも、山田洋次か、人情ものか。湿っぽくなるの嫌だね」
    ポスターを何気に見ていて、あらすじも書いていないし全く何の情報もないポスターを発見した。
    「これ、どう?」
    「どんな映画ですか?」
    「いや、ポスターに全く何の情報もない。ただ面白そうな気がする」
    そう言って、そのポスターを指差した。
    「高良健吾と吉高由里子ですか、好きな俳優です」
    「じゃあ、これにしようか」
    そうして、チケット売り場に入って行く。
    「えーと、横道なんとか、大人二枚」
    「二人で2000円になります」
    「安い」
    思わずおれが叫ぶと、チケット売りのおばさんは笑顔で、
    「今日は金曜日でペア割りの日なのよ」
    と言い、
    「劇場は外に出てバス停の前の四階ね」
    と付け加えた。
    一旦外に出るのか、なかなか面白い映画館だ。
    「横道なんでしたっけ?」
    と小柳日向が聞く。
    「なんだったっけ、たしか、横道…よのすけ?」


    yonosuke.jpg

    横道世之介・公式サイト

    つづく。

    Category : 何故?記
    Posted by ポリネシアンハート on  | 0 comments  0 trackback

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