小柳日向との会合 その6-1 -恋と酒と男と女ー

    博多駅筑紫口を出てすぐの居酒屋街に向った。
    金曜日の夜で、何件か満席だと断られた挙句に、入った店で、
    「2人なんだけど空いてる?」
    と聞くと、
    「いま通常の席が満席なのですが、21時半まででよかったらVIP席が空いてます」
    と言うので、何でもいいからと入ると、10人くらいは入れる大きくてゴージャスな完全個室で、なんとカラオケ付きだ。
    今日は何かとついている。
    ようやく全裸になれる。
    おれは着ている服を脱いで裸になった。
    注文をとりにきた店員がびっくりしているが、特に何も言わない。
    おれはビールを、小柳日向は梅酒を頼んだ。
    「きみは恋をするのか?」
    日常から遮断された暗くて広い空間に二人きりでいると、何でも聞いていいような気になる。
    「どうして裸になったんですか?」
    小柳日向は質問返しをしてくる。
    「おれは服を着ているのが嫌いなんだ。めんどくさいんだ。勘違いしたらいけない。ただそれだけで他意はない」
    「わたしは脱ぎませんよ」
    小柳日向は梅酒を飲みながらクールに言う。
    「当然だ」
    おれはビールを飲みながら、甘海老のから揚げを食べた。
    「わたしは目に見えるものしか信じません」
    「もし目が見えなくなったらどうするんだ?」
    「その時は触れられるものしか信じません」
    おれはコールボタンを押しもう一杯ビールを頼む。
    「おれが今まで信じてきたものは見えないものだった。見えるものが偽物で、触れられるものが表層で、そんな気持ちで生きてきた」
    「ただどこにも本物はなく、触れられない深層もなかったんでしょ」
    「だからおれは裸になるしかなかった」
    アルコールがまわってきたせいで、小柳日向が少年に見えてきた。
    「きみは本当は少年だろ。金玉をぶらさげているんだろ」
    「ぶらさげてません」




    つづく。







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