マイペース・マイワールド

    東南から来たはずだが、いつからか日本人。

    大阪文学フリマ外伝ー西成初日、撮影初日ー

    関空から特急電車に乗り新今宮駅に降りた。西成への階段を降りていくごとに、壁の落書き、吸殻、薄汚れたおっさん。あからさまな光景にこれは本当にひどいんだなと気づいた。地下通路をくぐり、西成署を目指す。途中、労働会館と書かれた倉庫のような場所に、ダンボールにくるまり寝ている爺さんの群れ。写真を撮りたかったが、さすがにやめた。おれが逆の立場なら嫌だろう。西成署の通りに入ると、路上に座り込んでワンカップ酒を飲んでいるおっさんや爺さんたち、一杯飲み屋も立ち並び昼間から皆ホルモン(どて焼き)を肴に酒を飲みながらカラオケに興じていて繁盛している。西成署に着くと、バリケードのように白く高い柵で周囲を覆われた警察署は、まるで要塞のようだ。西成署前でJASONさんと待ち会わせていたので、どこにいるのかと周囲を見回すと、この町の人と同じように道端に座り込み警察署の壁にもたれかかりながらビールを飲んでいた。ただよく見れば飲んでいる酒がビールなのでわかる人にはこの町の人ではないと気づく程度の差異で、JASONさんを知る人ならわかるだろうが、あまりにも町や人と同化していて通り過ぎそうになった。慌てて後戻りし、「お待たせしました」おれが言うと、幾分赤ら顔のJASONさんが会釈して立ち上がった。その時閃いたのが、この町で、JASONさんを主役に、動画を撮ろうという発想だった。少し前から零号のPVをどうするか思案していたところに、この町とJASONさんがうまく被り、それがまるで神の啓示のようにおりてきた。「すみません、映画のような動画を撮りたいんですが、顔出しOKですか?」失礼なことも省みず挨拶も適当に、すぐにそんなことを聞いた。もうそのことしか頭になかった。JASONさんは「いいですけど、映画って、絵コンテとかあるんですか?」と言ってきた。そんなものあるわけがない。今思いついたのだ。衝動だ。「頭のなかに」
    ひとまず部屋に入る。2F3Fは生活保護の方や日雇いの方の住居になっているようで、1泊だけのおれたちは4Fの部屋だった。3畳一間のいい部屋だ。荷物を置きすぐに隣のJASONさんに声をかける。「すみません、早速撮影したいので、おれの部屋にお願いします」JASONさんと向かい合い、煙草を吸いながら、一発目のシーンの説明をする。「今回のJASONさんの役どころは、いわば西成の人です。何かのきっかけでここに流れ着いたんです。そうしてそんなアナタがまた何かのきっかけで一握りの希望をもってこの町を出る話です」おれは今思いついたことを言った。この町の奇妙なエネルギーをどう扱っていいのか、多分そういうことだったかもしれない。JASONさんは「わかりました」と煙草を消した。「それで、今から撮るのはどういうシーンですか?」おれは部屋を見回しながらJASONさんに伝える。「朝起きて、カーテンを開ける。それだけです。でも、アナタはいつもはカーテンを開けない人なんです。それが今日はカーテンを開ける。窓の外に思いを馳せる。これは多分最後のシーンになります」JASONさんは頷き、布団の上に寝る。「いいよ」目を瞑ったままJASONさんが言う。「わかりました。でももう一度確認の為に言いますね。アナタはいつかこの町をでようと思っている」おれが言うと「わかってる」とJASONさんは言う。「では、普段通り起きてください。演技はいりません」おれがいうと、JASONさんは頷く。デジカメの撮影ボタンを押す。撮影は一回で終わった。
    「これはいい作品ができますよ」
    その時撮ったのがこのシーンである。

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    ただこのシーンは使う場所がなく本編ではカットした。

    Posted by ポリネシアンハート on  | 0 comments  0 trackback

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