マイペース・マイワールド

    金持ち喧嘩せず

    文学(もう1つの)商業化への挑戦4-大阪文学フリマ代表・上住断靭との会話ー

    第二回福岡ポエイチ二日目が終わり、またもや打ち上げに行った。
    会場であった冷泉荘から歩いて3分程度の川端商店街にある『やぶれ居酒屋まさかど』という店に入った。
    何がやぶれているか見た目ではわからない、今でもその『やぶれ居酒屋』の意味がわからないのだが、兎にも角にも、私たち今時珍しい文芸同人誌一行は二階へあがる。
    牟礼鯨と高村暦と上住断靭と私と福岡ポエトリーの平地くんで同じ鍋をつつく席に座る。
    牟礼鯨が問い詰める。
    「小柳日向問題、どう責任とるんだよ?」
    「いや、来ると思っていたから、次を考えてなかった・・・」
    私はうな垂れたままビールを一気に飲み干した。
    その後、牟礼鯨と高村暦は飛行機の時間だからと19時過ぎに退席した。
    彼らが帰ってしばらくして冷泉荘の主人が血相を変え二階へ駆け上がってきた。
    「誰かカート忘れてない?」
    そのカートは冷泉荘の建物前に放置しているとのことだった。
    ※のちに牟礼鯨がネットの使い手としてあるまじき行為をしていたことが発覚、まかり間違えば犯罪者となりかねない一悶着があったのだが、それはもう書かずに話を進める。
    上住くんと平地さんと私とで、何故か小柳日向の話をした。
    というのも、上住くんが大阪文学フリマ代表として、第一回大阪文学フリマに小柳日向が来なかったことをイベント主催者として残念がっていて
    「来なかったことで1万人来場者が減りました」
    と冗談混じりで嘆く。
    すると平地くんが興味深々で聞いてくる。
    「小柳さんというのは、それほどの人なんですか?」
    その反応が面白かった私は、
    「もはや人間ではない、神の領域だよ」
    と言う。
    「いやーいつか見てみたいです。そんな人いるんですね」
    上住くんと平地くんが声をそろえて言う。
    私は「うむ」と頷き上機嫌で酒を飲んでいた。
    すると不意に上住くんが、ipad miniを操りながら、ツイッター画面を開く。
    「あっ、小柳さんツイートしてますよ。間に合わなかったって」
    そう言って、私にツイッター画面を見せる。
    私は一気に酔いがさめ現実へ引き戻され、「責任」の二文字で呼吸困難になりかけた。
    上住くんが
    「電話して謝った方がいいですよ」
    と言う。
    「そうだね・・・」
    電話したが、しかし店内にいる今時珍しくもない文芸同人誌連中の喧騒で全く小柳日向の声が聞き取れず、私の声も力なく蚊の鳴くような声しかでなかったので、一言謝ることしかできず電話を切った。
    またもやビールを一気に飲み干した。
    すると上住くんが慰めてくれる。
    「小柳さんには悪いけど、なかなか面白かったです。あれって、文学フリマ十周年記念文集で市川さんが言っていた絶世の美少女が文学フリマに現れの具現化ですよね、ふかえりモデルの」
    「そうなの?文集買ったけど、まだ読んでない。ただ面白いかなと思って」
    「読んで実践しているのかと思いましたよ」

    その後、打ち上げが終わり、外にでる。
    商店街の真ん中で今日だけは今時珍しくも無かった文芸同人誌一同は
    「おつかれさま」
    の一言で、今時珍しい異質な存在として、街の中へ消えていく。
    「もうちょっと飲みたいな、どっかBARで話しましょうよ」
    上住くんが言う。
    「ゲイじゃないよね?そうであってもいいんだけど、おれは違うからね・・・」
    一応確認して、博多駅まで戻り、適当な店に入り、二人きりで向かい合い、ひとまずビールで乾杯し、つまみにゴボウの天ぷらを頼む。
    「ぼく、会社辞めます」
    「なんで?」
    「大坂文庫で起業するんです」
    「きみは大胆だね、大阪文学フリマ代表なんてやってみたり、25歳だったっけ? 若いのに凄いよ」
    「自分もちょっと変わった気がします。何でもできるような気がしてきて、自信がついたというか。さっきの文学フリマ十周年文集の話に戻りますが、あの文集で、文学フリマ事務局長の望月さんが大阪で文学フリマやりたい、大阪の人がやりたいって言ったら任せたいって書いてたんで、すぐにメールしたんです。あの文集はぼくにとって人生の転換期かも」
    「あの文集を企画編集した人と大阪で話して浅野忠信似のイケメンだったから、おれも買った」
    「森井さん、やっぱゲイなんですか?」
    上住くんが少し怯えた目をする。
    「いや、違う。・・・と思う」
    どうにも昨日のミッドさんのこともあり、自分でもわからなくなっている。
    「ともかく東浩紀はスターを作ることが大事だって言ってました。ぼくが大阪文学フリマ代表としてスターを作りますよ!」
    「昨日も久保田くんが同じようなこと言ってたけど、それって言うほど簡単じゃないよ。具体的に何も考えてない気がする、どうやって作るの、あるいはどうやったらスターなんてものが出るの?ちゃんと考えてる?」
    「まだ、そこまでは・・・。まだ一回目ですし、まあ、考えますよ!」
    上住くんは、どことなく落語家の春風亭昇太に似ている。
    「大阪に限らず地方で、あるいは各地域で文学フリマをやる意味わかる?大塚英志さんが前の文学フリマ後のニコ生対談で、未だに東京一極集中について怒ったのは何故かわかる?それって販路の拡大ができてないからなんだよ、もともとコンセプトが一日だけの巨大な書店なんだよ文学フリマは、だから一般の来場者を増やさないとイベントのコンセプトが、今みたいにただの同人誌の集まる場所、オフ会としての文フリに歪曲されて認識されていくだけだよ。モッチー考えてるのかな?」
    「一般来場者についてはちゃんと考えてますよ。ただリスクを負わないだけです、あるいは負えないんですよ」
    「大阪は次回からきみが全部やるんだろ?どうすんの?そのあたりのこと考えてるの?ポスターやチラシ、宣伝なんか」
    「もちろん、やります。少なくとも会場である堺市の市民には知ってもらえるようにしたいです、前回家族連れとか結構来てたでしょ?あれ何でかと言ったら、あの会場は休日には必ず何かのイベントがあって市民の人は何かやってるだろって、ふらっと立ち寄る場所らしいんですよ」
    上住くんの顔が今ではもう春風亭昇太そのものになっている。
    「で、森井さん、『何故?』やめて、これからどうするんですか?」
    「小説書く以外は何も考えてない。ただせっかくここまで書いてきたんだし文学フリマでも何かしたい。いま頭に浮かんでいるのは無謀なことかもしれない」
    「10周年文集で、市川さんも、同じようなこと言ってましたよ。主催者も参加者も、もっと無謀なことを考えるべき時期だって」
    「そう?市川さんの発言は知らなかったけど、これは誤解して欲しくないんだけど、はじめに無謀なことをしようとこのアイデアを考えたわけじゃなくて、自然と頭に浮かんだことが自分でも無謀なんじゃないかという、結果そういうものになってしまったというだけなんだけど」
    「何ですか、それは?きっとすごいアイデアなんじゃないですか?」
    上住くんが目を輝かせ、私の目を真っ直ぐ見つめ、聞いてくる。
    私は、言おうか言うまいか迷った末に、せっかくだし彼だけには言っておくことにした。
    「うん、ヒーローもので、ザ☆ブンガクマン!」
    今まで頭の中では何度か「ザ☆ブンガクマン」という名前を思い浮かべていたのだが、いざ自分の口から「ザ☆ブンガクマン」と声にだし発したのは初めてだったので、言葉の響きの予想以上の可笑しさに、思わず私は「ふふっ」と笑ってしまった。
    すると上住くんは、急に狂人を見るような不安そうな表情になり、視線をそらし、急いでかばんを手に持ち椅子から立ち上がった。
    「そろそろバスの時間なので拙者帰ります!御免!」
    そう言うやいなや逃げるように帰っていったのだった。



    おしまい。




    (※しかし、第二回福岡ポエイチから2週間が経過し、記憶に自信がない。)

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