第十七回文学フリマ前日・大門のBAR聖者にてグレンドロナック1968forANAを飲んだ。

    11月3日、新宿・模索舎へ納本に行ったあと、蒲田の手前、浜松町駅で降り、大門のBAR聖者へ向った。
    日曜日であるし休みでないことを祈っていたら、階段の下に小さな看板が出ており、ひとまず安心した。
    二階へあがり、ドアを開けると、一年ぶりにマスターの顔を見ることができた。
    得も言われぬ安堵感に包まれ、自然な笑みがこぼれる。
    もうあれから一年たったかという感慨、どんな形にしろ文学をやりながら生きのびたことへの感謝、そのような謙虚な気持ちが不意に湧きあがってくる。
    思い起こせば。
    文学フリマがそれまでの蒲田から東京流通センターで開催されるようになった初めの年だった。
    東京モノレールに乗るのに便利だろうと浜松町のホテルをとった。
    浜松町から大門へかけてショットバーを歩き回り探していた時、街の片隅で見つけたのが、このBAR聖者だった。
    それからは、一年に一度、11月の文学フリマ前日に必ず立ち寄るようになった。
    今回で3度目だ。
    11月がちょうどBAR聖者の周年記念月でもあり、初めて訪れた時が記念すべき開店一周年目で、今年は三周年目だった。
    マスターは毎年、周年記念として、ウイスキーのオリジナルボトルを作っている。
    それは知っているのだが、1ショットの金額が、正確な数字は差し控えるが、例えばファミレスで一家族が食事できるくらいの金額なので、貧乏な私には高くて飲めずにいた。
    だが、今年は、転機の年でもあったので、はじめから飲むつもりでいた。
    「今年は周年記念のボトルを飲もう、でも1ショットは無理だから、ハーフで」
    それでもさすがに貧乏なのでハーフを頼む。
    「今年の周年記念では、オリジナルボトルともう1本こちらのグレンドロナック1968ANAボトルも開けてます、よかったらグレンドロナックを飲んでみますか。一般流通していない限定製造のレアボトルです。是非飲んでみてはいかがでしょう」
    全く無知なので、
    「じゃあ、ロックで」
    と私が言うと、マスターはにっこりして、
    「もしよろしければ、ストレートで香を楽しみながら飲んでいただきたいのです。お水を用意します」
    と言うので、なるほどと思い、私は頷いた。
    そうして、よくわからぬまま、グレンドロナック1968forANAが注がれたワイングラスを手に持ち、まずは匂いをかいだ。良い香だ。芳醇。そっと口にする。まろやかな香にうっとりなった。
    「これは、いいものだ」
    私は人からいいものだと言われても、自分で試さないといいものだと認めない性分だが、これは本当にいいものだった。
    しばらくマスターと二人きりだったので、芳醇なウイスキーを口にふくみながら、雑談をしていた。
    「今回も文学フリマですか?どうです?」
    「ええ、ひとまず『何故?』は休止しまして、しばらく一人で好き勝手やろうと思ってます。今回はエロオナニストです」

    グレンドロナック1968forANA


    こうやって一年に一度、こうしてこのBAR聖者に来て普段飲めないような種類の酒が飲めること、それが私にとって何らかの一つの、しかし、力強い一年の終わりの旗印になっている。


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