マイペース・マイワールド

    金持ち喧嘩せず

    第二回文学フリマ大阪外伝ー味園ビルのお笑い芸人さんー

    9月13日。19時半。
    多分、牟礼鯨たち文フリメンバーは前回同様デジタルカフェに巣くっているだろう、と(サブカルの発信地とwikipediaに記載されている)味園ビル2Fへ向かったが、わかば活動で疲れていた私は早くビールが飲みたくてしかたないのに、デジタルカフェは20時OPENらしく閉まっていた。
    円状になっている2Fをぐるりと回り、どこでもいいからビールが飲める店を探すのだが、数えたわけではないが、ざっと見て約20店舗くらいあるくせに、まだサブカル的には時間が早いのか、5店舗くらいしか開いている店はなく、そのどれもがサブカル臭漂う何だか濃い店ばかりだった。
    断っておくが、私は、文学だが、サブカルではない。ZINE展の時、こんぺき出版の豆塚さんから「12月にイベントやるんで、そこである方とサブカル対談してほしい」と言われたが、私のどこを見てサブカルと思ったのだろう。不思議でしかたない。私はサブカルではなく、文学の王道だ。
    それはともかく、そんな入りづらい店の中、一店舗だけ、コの字型のバーカウンターだけの普通のBARぽい雰囲気の店があった。店内を覗くと、客は一人もおらず、カウンターの中に小柄で可愛らしく真面目そうなバーテンの女性が一人立っていた。看板に『群青海月』とある。久しぶりに可愛い女性と話そうと店に入り、薄暗い店内の一番奥のカウンター席に座り、私はひとまずビールをもらい、J島はスムージーとかいうよくわからないドリンクを頼んだ。するとすぐ坊主頭でメガネで今はなき南海ホークスのTシャツを着た、いかにもサブカルなおじさんが入ってきた。私は心の中で人にあだ名をつけるのが好きだ。おじさんは南海太郎となった。バーテンの女性と南海太郎はしばらく奈良の話をしていた。私は人の話を聞くのが好きだ。じっと聞いていたが、どうにもイマイチ噛みあっていなかった。どうやらバーテンの女性は話ベタなようだ。
    ふと横を見るとJ島はアルコールが入っていないスムージーで酔っているのか、わかばを食べ始めた。
    「気でも狂ったか!」
    「はじめから狂っとるよ」
    「ああ、そうだった」
    南海太郎が帰ると、次にデブで若い男が弁当のようなものを持って入ってきた。甲高い声でいかにもオタクな男だ。私は早速オタクボーイと名づけた。オタクボーイはバーテンの女性に弁当を差し上げ、前の席に座り、女性にむかってしきりと話しかけはじめた。私は人の話を聞きながら色々推測するのも好きだ。オタクボーイは、この女性が好きで好きでたまらず毎夜こうやって土産物を持ってきたりして入れあげている同じ階のオタクバーの常連でアニメ好きでフィギアを嫁と呼ぶような男だろうと思いながらじっと話を聞いていた。そんなオタクボーイに嫌気がさしたのか、口下手なバーテン女性が口下手なりに私にも話かけてきた。
    「味園ビルは初めてですか?」
    「いえ、去年、デジタルカフェに行って、それ以来です。九州から来ました」
    「何かの用ですか?」
    「ええ、1年に1度のイベントなんです」
    するとオタクボーイも話しかけてきた。
    「九州いいっすね」
    そのタイミングだった、隣の店舗の美容師をやっているという、いかにも北斗の拳に出てきそう世紀末風な髪型をした男がチラシを持って入ってきたかと思いきや「今度女装イベントするんで来てください」と言い、すぐ出て行った。
    するとオタクボーイが「私も女装イベント出ようかな」と言う。
    すかさずバーテン女性が「あんた女やないか」とツッコミをいれた。
    女?デブでオタクの男と思っていたが、女?女だとしたらオナベか?
    「失礼かもしれませんが、オナベの方ですか?」
    「いえ、普通の女です。普通に男が好きです」
    私は混乱した。男でもオナベでもないのに、この風貌で、普通ではないが普通の女と言う。
    「実は芸人です。このバーテンの女の子と漫才やってます」
    もうオタクボーイというあだ名も消えうせ何と呼んでいいのかわからない。
    そんなオタクボーイ風女芸人は、私を落ち着かせようと気をきかせて言ってくれたのだろうが、ますます混乱が増した。
    この口下手なバーテン女性もお笑い芸人か?
    「よしもとに所属してます。花鳥風月ってコンビです」
    それからお笑いの話を色々聞いた。舞台に立っても出演料500円で銀行振込時に源泉徴収され450円くらいになるのだとか。毎年ライバルが500人増えるから全員殺したいとか。NSCという吉本興業の学校を卒業して6年目らしく色々と苦労しているらしい。そういう話を聞きながら、彼らというか彼女らは6年であるが、私なんぞまだ文フリ歴5年じゃないか、と思った。それから自分に言い聞かせるように何事も継続は力だと自説を(いつものように)偉そうに語った。継続は力の意味は、続けることが力になる、というのではなく、継続できている時点で力がある、という意味だと私の持論を教えてあげた。二人は神妙に聞いていたが、多分内心「あほか、ぼけかす」と思っていたに違いない。特にはじめは可愛いと思っていたバーテンをしている方の女芸人は。
    話を聞くと、オタクボーイ改めオタクボーイ風女芸人の方も日替わりでこの『群青海月』という店でバーテンをしているとのこと。味園ビルには他にもR1グランプリでファイナルまでいった芸人も未だにバーテンとして普通に働いているとのこと。当の本人たちにとっては笑えないかもしれないが、素人である我々にはお笑い芸人さんに会える嬉しいビルである。花鳥風月さんは良い人たちだったので是非ともお笑い界で成功して欲しい。
    最後、店を出るとき、酔っ払いらしく、可愛いが意地悪そうな方に、
    「なんかギャグやって」
    と言ったが、丁寧に断られた。
    今思い返せばもうこの時からかなり酔っていたのかもしれない。

    そうしてデジタルカフェに入った。

    Posted by 椰子金 on  | 0 comments  0 trackback

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