大坂文庫へ『未事記』を寄稿。ーいま明かされる天皇小説誕生秘話(上住氏とのやりとり全編)ー

    今回大坂文庫へ『未事記』という短編を寄稿した。
    未だない事を記すという意味で、古事記の逆で、未来の話だ。
    もしかしたら、これで大坂文庫への寄稿は最後になるかもしれないから、最後に「何故、私が、大坂文庫に、創刊以来三回も連続して、天皇小説を書くことになったのか」を話しておきたい。
    もともと大坂文庫の誕生が、『何故?』の休止したすぐあとだったから、タイミング的にちょうどよかった。
    『何故?』に書いてきたものは比較的長めの、といっても400字原稿用紙で80枚~100枚程度の中篇が多かった。
    これにも理由はあって、短い作品が多かったから、長めの作品を、編集する立場として書いていた、という内幕がある。
    大坂文庫は私の雑誌ではないし、つまりはただのゲストだから、気軽に書ける短いものにしようと思っていた。
    あとは上住くんが考えればいいと気楽な考えで参加した。
    しかし、そうは問屋(上住氏)が卸さなかった。
    私は(半ば、強制的に)初回からずっと天皇をモチーフに書かされたといってもいいだろう。
    これには少しばかり理由がある。
    「私も参加するよ」
    そう参加表明して、すぐに上住氏からスカイプでの誘いがあった。
    私はあまり男の顔を見ながらスカイプなどする趣味は無かったが、仕方なく話をした。
    上住氏は、沈痛な面持ちで、こう言った。
    「後発の雑誌だから、少しはセンセーショナルなものがないと売れないでしょうね。アンソロジー本というか、幾人かの書き手を集めての、創作雑誌は無数にありますし、そのなかで多少なりとも色をつけないと目新しさはないでしょう」
    「確かにそうだろうね」
    そういう上住氏の真摯な言葉を受けたものの、その場では、特に、何も思い浮かばなかった。
    数日間考えた私は、前から書きたかった天皇ものを書くことにした。
    ここから先は、今回初めて語る内容だが、上住氏は編集者として優れている人で、当初私が送った『天皇陛下の恋人』という作品を、こういう言葉を添えて送り返してきた。
    「もう少し過激にできませんか?」
    『天皇陛下の恋人』を読んだ人はわかるだろうが、天皇の恋人はデリヘル嬢だ。
    しかしながら、当初、私が送った作品では、園遊会に来ていた女性芸能人だったのだ。
    実際のところは、それを読んだ上住氏が、
    「それではありきたりだし、ラノベっぽい」
    と言ったことで、思案し直し、デリヘル嬢に変更したという経緯だ。
    私は、
    「天皇陛下に、デリヘルって、大丈夫かな?」
    と聞いた。
    すると上住氏は、
    「後発なんですよ。挑戦的かつ挑発的じゃないとあかんのですよ」
    と唇をぐっとかみ締めて、言ったのだ。
    私は、その時、上住氏の覚悟を知った次第だ。
    だからして、
    「それならば」
    と第二号には、『雅子さん愛子ちゃん救出作戦』を送った。
    この作品に関しては、上住氏から一発で「合格です」と言われた。
    それで今回の第三号なのだ。
    だが、実を言うと、第二号を送ったあとだった。
    私は泣きを入れていたのだ。
    「もう、これ以上は、書けないと思うよ」
    正直言って、もうあれ以上は無理だろう、限界だろう、と感じていた。
    あれ以上書くと、さすがに私も身の危険を感じる。
    所詮、特に思想があるわけじゃないのだから、これで行動的右翼に殺されたら身も蓋もない。
    私の精神状態は、そういう限界に達していたのだ。
    しかし、前回の第二回文学フリマ大阪の時だった。
    上住氏が、私のブースを訪れて、笑顔だが、冷酷な目で、こう最終宣告をしたのだ。
    「最後、もう一作品だけ、お願いします。もし万が一があっても、骨は、僕が拾います」
    その目のあまりの真剣さに、私は、頷くしかなかった。
    それで、今回、この『未事記』を書き上げたという次第だ。
    全て出し切った気がしている。
    だが、もしかしたら、また上住氏から書き直しの指示がくるかもしれない。



    私も身を削って書いたし、上住氏も無論殺される覚悟だ。
    11月24日、第十九回文学フリマで、是非とも、ご一読願いたい。


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