第四回福岡ポエイチにてー文フリ福岡副代表、あるいは古賀との議論ー

    二日目、加藤治郎氏の朗読がはじまる10分前、煙草を吸いに、冷泉荘四階の喫煙所へ行った。
    ひとまず一服だけして、朗読を聞きに降りるつもりだったのが、私のすぐ後ろに一人の大村昆似の男が付いてきた。
    胸からぶらさげている名札には文学フリマ福岡と書かれている。
    「なんの用だ?」
    私は、ひとまず、わかばに火をつけた。
    男は、階段に座り、わかばではない煙草に火をつけた。
    前回のポエイチの時は、ちょうど同じ時間帯に、詩人の三角みづ紀さんと話をしたが、今回は、むさくるしい男だ。
    「森井さんのブログ見てますよ。あんまり変なこと言わないでくださいね」
    男は、にやにやしながら、そう言った。
    どうにも理由はわからないが、私と対峙するとき、男はにやにや、女は何故か怯えた目をしていることが多い。
    「まず名を名乗れ」
    私がそう言うやいなや、男は懐に手を入れた。
    もしや私を殺れとM月にでも言われた鉄砲玉かと一瞬身構えた。
    だが、次の瞬間、男は、ドスや拳銃ではなく、一枚の名刺を取り出し、私に差し出した。
    「文フリ福岡副代表、社会学者の古賀と言います」
    「社会学者?」
    「ええ、アニメですけど」
    「じゃあ、文学ではなく、アニメのイベントをやれ」
    「代表は、東浩紀が好きなんで」
    「あのメガネの女か」
    「あるいは、黒いスーツの」
    「配置図も読めない、あの女か」
    「あるいは?」
    「昨日の終わり、私のブースに荷物を置いていたんだよ。だから、あんたら文フリ福岡のブースはあっちだと教えてやったら、私の言うことが信用できないのかわざわざ配置図を取り出し、ああ本当だ、とすっとぼけたことを言った、あの間抜けな女か」
    「ああ、あるいは、そういうところはあるかもです」
    「もういい。で、何の用だ?」
    「いや、あるいは、実は、言いたいことは山ほどあるんですよ。でも、あいつらには関わるなと上から言われているんで、この場面見られただけで怒られるかも」
    「あいつら?」
    「ええ、あるいは、森井さんと牟礼鯨さんですよ。ブログやネットで何言われても相手にするなって言われてます」
    「馬鹿は相手にするな、みたいな感じか?」
    「まあ、あるいは、そういうニュアンスです」
    「じゃあ、やめとけ。どうせ不毛に終わることはわかっているしな」
    「いえいえ、あるいは、ちょうどいいので、話しましょう。ただ、僕が今から語ることは、僕個人の意見で、文フリ福岡の意見ではありません」
    「おまえら、いつも、そうやって逃げるよな。一体、誰に聞けば、責任ある意見が聞けるんだ? M月にしろ、ボランティアだと言う、参加者の意見を汲み取っている、と逃げる。一体、文フリの実体はどこにあるんだ?」
    「さあ、あるいは、そういうシステムなんですよ。森井さんは、そのシステムがおかしいと言っているんですか?」
    「おかしいだろう。どう考えても」
    「いえいえ、あるいは、これは、日本と同じシステムですからね。今はもう全く関係ないけど、便利だから、大塚英志の美辞麗句な言葉を憲法みたいに使ってね、天皇みたいにどこか遠くに置いておいてね、でも美辞麗句ですから聞こえはいいし、人は集まりますよ。森井さんも騙された口でしょ。文学フリマは書き手の交流の場ですよ。勘違いしたらいけない」
    「交流なら、なにも作品を作らなくてもいいだろう。即売会ではなく、違う方法があるだろう」
    「あるいは、文学カフェみたいなものも、そのうちやろうかと考えてます」
    「じゃあ、それをしたらいいじゃないか。一々、即売会なんかまどろっこしい方法とらなくてもいいだろう」
    「あるいは、今のは、僕の意見です」
    「なにが、あるいは、だ。私は、あるいは、を多用する奴は嫌いなのだ」
    「あるいは、コミュニケーション、ディスコミニケーションさえですね」
    「あるいは、あるいは、うるさい奴だな。一体、何が、言いたいんだ?」
    「あるいは、地方と中央のですね、文化運動のですね」
    「また、あるいは、か。いい加減にしろ。なにが文化だ、恥を知れ」
    「あるいは、スタンリー・フィッシュの解釈共同体概念によるとですね」
    「おまえ、一体、誰と話してるんだ? ちゃんと人に伝える気あるのか? きちんと自分の言葉で話せ」
    「ええ、ですから、あるいは、この前、東京の文学フリマに初めて行ったんですがね」
    「初めて?」
    「ええ、あるいは、代表は行ったことあるみたいですが、僕は第二十回が初めてなんですがね。地方は、あるいは、文学フリマを知らないと思うのですよ」
    「そんな情弱おるかい、今時」
    「いえいえ、福岡には、あるいは」
    「福岡舐めてんのか」
    「ああ、あるいは、森井さん、福岡の方ですか? 僕は横浜ですが」
    「いや、大分やけど」
    「大分って、あるいは、福岡より地方ですよね。植民地ですよね」
    「なんの植民地や。わけわからんこと言うな」
    こんな感じで、不毛な議論が一時間ほど続いた。
    結局、楽しみにしていた加藤治郎氏の朗読も聞けずに終わった。
    最後、階段を下りていく途中、後ろから、古賀が呼びかけてきた。
    「森井さん、文フリ福岡来てくれますよね?」
    私は、振り返らずに、こう言い残し、ポエイチ会場へと戻っていった。
    「さあな。だが、もし行くとしても一般来場者として行くよ。おまえ勘違いしてるよ。文学フリマ含め文芸即売会に必要なのは書き手じゃない。ちゃんとした読み手なんだよ。書かないからこそ、ちゃんと物が言える、真っ当な読み手なんだよ。よく覚えとけ!」
    コメント

    純粋に

    読みたい人のために、
    書いているのです。
    文学専門家?気取り?の
    ためにでは、ありえません。
    似た者同士の仲良し文学界は、消えてほしい。
    流通に乗ろうが乗るまいが、
    ぼくが心を込めた本を、
    あなたに手渡し出来ることこそ、
    書いた言葉に真心をのせて、
    伝えることです。
    本との交換は、お金でなくてもいい?
    おむずびでもいい。のです。
    (お腹が空いて空いて空きまくってるときは、
    白いお米の上で涙が光ます)

    Re: 純粋に

    にぎにぎさんへ

    そう、その通りです!
    そして、最大の問題は、読みたい人は、どこにいるかです!
    あらゆる手段を考えましょう!
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