マイペース・マイワールド

    金持ち喧嘩せず

    一期一会 -田辺紀子さんとの会話ー

    金曜日の創立記念号の文学飲み会は、居酒屋に行く前に、公園での待ち合わせだった。
    初老の淑女がいたので、多分この人が俳句の田辺紀子さんだろうと思って、「はじめまして森井です」と声をかけた。
    すると田辺さんは、間髪いれずに、こう言ってくれた。
    「ああ、あなたが『田中の夢』の作者ですか。今回の本の中であなたの小説が一番面白かったわ」
    いきなり私の小説のタイトルを言ってくれて、つまりは覚えてくれていて、なおかつ読んで面白いと言ってくれたことに正直驚いた。
    読者の想定に72歳の女性を考えていなかったから、そのような、しかも俳句を嗜む淑女然とした方に、私のあのような乱暴な小説が受け入れられたことが本当に嬉しかった。
    それから居酒屋でも隣の席に座り色々と話をした。
    「あんな良い小説を書かれるくらいだから、あなたは芥川賞候補になられたことがありますか」
    まさかの質問で、思わず飲んでいたビールを噴出しそうになったが、「いいえ私は反商業主義ですから」と答えた。
    「そんな感じがするわ。賞には応募しないの」
    「やる気にならないですね、何だかばかばかしくて」
    「あなたは新しい人ね。そういう人でないと無料でこんな良い本は作れないわね。ありがとう」
    失礼かもしれないが、何だか、死んだばあちゃんに言われたようで、胸が熱くなった。
    いつまでも覚えていたいエピソードが、また一つ増えた。

    Category : 大分文学会
    Posted by 椰子金 on  | 0 comments  0 trackback

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