田舎道

    数週間前から停車時の揺れが激しいと思っていたがいよいよ動かなくなった。
    もう20万キロ以上走っているから驚きはしない。
    仕事から帰宅しようとエンジンをかけたのだがエンジンはかかるがD(ドライブ)に入れるとエンストするのである。
    まあいいだろう。
    車を置いて駅まで歩くことに決めた。
    大した事はない。
    仕事場は田舎にありがちな最寄の駅から徒歩1時間半の場所である。
    たまにはいいだろう。
    しかし勾配が激しい熊本の道であった。
    だんだんと憂鬱になってきた。
    何の因果でこんなことになったのか。
    涙が零れそうになった。
    振り向き来た道を戻ろうかと迷った
    だが引き返しても動かない車があるだけだ。
    先は見えなくとも前へ進むしかないのである。
    俯き路傍の草を眺め歩きながらこれまでの悪事を思い返していた。
    私だけが悪いわけではなかったはずだ。
    すると駅まで歩く道すがら何人もの地元の中学生とすれ違うのである。
    「和尚、こんにちは」
    田舎の中学生は躊躇なく挨拶をしてくるのである。
    本当に面倒くさい奴等である。
    こんにちは
    私は多分聞こえてはいないだろう蚊の鳴くような声で返した。
    歩いているのは中学生と爺さん婆さんと私だけの田舎道。
    延々と生き地獄道が続くかと思っていたそんな矢先ようやく駅にたどり着いた。
    しかしよくよく考えてみれば熊本に来て熊本の電車に乗るのは初めてだった。
    私は子どものようにわくわくしはじめた。
    小さい駅だが無人ではなく駅長が一人いた。
    私は切符を買い、駅長に切符を見せ、自動改札口ではない改札を通り過ぎた。
    電車は20分に1本程度来るらしい。
    10分ばかりホームのベンチで待った。
    無数のもっこすたちに取り囲まれた。
    電車が来た。
    しかし田舎だ。
    慌てることはない。
    座る場所はいくらでもあるのだ。
    4駅目が私の住むアパートの最寄り駅であった。
    最寄り駅から徒歩30分である。
    田舎にしては好立地の場所である。
    電車を降りると何故か清々しい気分になっている。
    人間とは不思議である。
    コメント
    トラックバック
    トラックバックURL
    Comment Form








    管理者にだけ表示を許可する






    カテゴリ
    月別アーカイブ

    Powered by FC2 Blog | | Template Design by スタンダード・デザインラボ