マイペース・マイワールド

    心持ち喧嘩せず

    Kくん曰く「公安が動いています」

    夕方、家のチャイムがなったので、いよいよ警察がきたか、と身構えてドアを開けると、Kくんが立っていた。
    「先生、大変なことになりましたね」
    そういいながら、周囲をしきりに気にしている。
    「ああ、そうなのだよ。しかし、たしか、きみは入院してたのではなかったか」
    「一ヶ月ほど前にでてきました。もう寛解しました。そんな話はともかく早く家に入れて下さい。公安がいます」
    相変わらずのKくんを部屋に上げ、珈琲をだし、テーブルを挟んで座った。
    珈琲を一口飲んだKくんは、こう言う。
    「ここ最近の先生のブログを拝見し、まだ先生が重大なことにお気づきになっていないようなので、お知らせに来ましたよ。電話では盗聴されるし、家も危ないですが、致し方ありません。先生、これは、ただの哀れなネットの子の通報ではありませんよ。先生を思想犯として警察は逮捕する気でいますよ。公安が動いています」
    私は驚いた。いつもならKくんの戯言と一笑にふすのだが今は現に警察まで来ているし、ただの妄想とは思えないリアリティがあった。
    「しかし、何故、私を?」
    「先生、天皇小説書いているじゃありませんか、あの小説は面白すぎて文フリ界隈で話題になりすぎたんですよ。もう随分前から公安が先生をマークしています」
    「しかし、あれは」
    「面白すぎるんですよ。国体を揺るがすような書物を国家が許すはずがありません」
    今日のKくんには後光が射している。
    「私はどうなる?」
    「思想犯の末路は決まっています。小林多喜二です」
    私はアノ写真を想像し震え上がった。

    小林多喜二

    「どうしてこんな世の中になってしまったんだろう……」
    「先生は思想なき思想犯ですね。しかし国家は先生を見せしめにするでしょう」
    Kくんはそう言うと一気に珈琲を飲み干し立ち上がった。
    「これ以上の長居はできません。公安が外にうじゃうじゃいますからね」
    そうして足早に帰って行った。








    Category : 創作メモ
    Posted by 森井聖大 on  | 0 comments  0 trackback

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